高齢者向け介護施設では、災害が発生したときに対応できるよう準備や対策が求められます。防災グッズ・備蓄品を常備するなど、BCP対策になる対応をすることが大切です。介護施設では要支援や要介護の高齢者がいる特徴を踏まえて、高齢者対応の防災対策が必要です。高齢者の事情に合わせた非常食のおすすめもご紹介します。
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高齢者向け介護施設では、地震や津波などの災害が発生したときに従業員だけでなく、利用者の高齢者や家族も考慮した防災対策が必要です。もし災害が起きたとしても、介護を必要とする高齢者のために事業を継続できるようにBCP対策をすることも求められています。この記事では災害時に高齢者向け介護施設で必要な対応と、事前にできる備蓄による防災対策を解説します。高齢者の特徴に合わせた対応を進めましょう。
災害時に高齢者が陥りやすい問題
災害発生時には、介護施設では高齢者に配慮した対応が求められます。高齢者は災害でトラブルに見舞われる可能性が高いので、陥りやすい問題を理解して適切な対策を講じることが大切です。
自力で情報収集が素早く行えない
高齢者は情報収集の手段が限られている場合があります。普段はテレビや新聞で情報を得ている高齢者は、携帯電話やスマホによる情報収集を素早くできない可能性があります。災害で停電になると状況がわからずに避難の判断ができない場合もあるので配慮が必要です。
自力で避難ができない
介護施設を利用している高齢者の中には、介護者がいないと避難できないことがあります。自立して生活できない状態になって介護施設に入所している場合が多く、補助がないと歩けない人もいます。避難できずに取り残されたり、移動中に転倒して怪我をしたりする可能性を考慮した防災対策が必要です。
避難生活に馴染めない
災害時には避難生活を求められる場合があります。自宅を離れて避難場所で生活をすることがストレスになる人もいるので、精神的なケアが必要です。避難生活に馴染めず、認知症や持病が進行することもあるため、介護施設ではケアの方針を定めて対応することが大切です。
非常災害時に介護施設が取るべき対応
2021年の介護報酬改定によって介護施設では2024年4月からBCP(業務継続計画)の策定が義務付けられました。災害が発生したときの介護施設が取る行動・対応をまとめる必要があります。ここでは介護施設でのBCP対応に必要な対応を紹介します。
参照:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン|厚生労働省
安否確認の方法を決めて実施する
災害時には安否確認が重要です。入居者、職員、見舞いに来ている家族などの安否を確認します。入居者と職員は氏名と顔写真のリストを作っておくと便利です。安否確認の担当者と確認フローを作成してスムーズに確認します。
安全な集合場所を決めて誘導する
入居者を安全な場所に誘導します。大きな火災や地震などの自然災害では、速やかに避難しなければ危険があります。災害状況を把握して安全な場所に利用者を誘導しましょう。エレベーターの中に取り残される場合もあるので確認が必要です。また、災害の種類ごとに集合場所を決めておくと、任務を終えた職員も同じ場所に集まります。
扉・窓・非常口の対応をする
扉、窓、非常口は避難しやすく、災害が広がりにくいように対応することが必要です。避難を優先する地震では扉や非常口を開放します。しかし、火災の場合には延焼を防ぐために防火シャッターが下りる場合もあります。窓を開けて煙を外に逃がし、燃え広がっている部屋から避難を終えたら扉を閉める対応も必要です。
防災グッズを準備して活用する
防災グッズを準備しておき、災害が発生したときには活用しましょう。自分では動けない高齢者を避難させたり、寒い日に避難して凍えそうになっている人たちに毛布を渡したりしてケアをします。
入居者の家族に安否を連絡する
避難が完了したら、入居者の家族に連絡を取ります。大きな災害のときには連絡を取れない場合もありますが、電話やSMSによって安否確認の状況を伝える方針は立てましょう。家族が迎えに来たときには対応します。
施設の状況を確認する
避難して災害による危険性がなくなった時点で施設内の状況を確認します。医療機器による治療をしている入居者がいる場合には速やかな機器動作の確認が必要です。不具合が起きている場合には、修理手配が可能かを確認したり、主治医に相談したりして対応します。
高齢者向け介護施設におすすめの防災グッズ・備蓄品リスト
介護施設では高齢者向けの防災グッズの用意が必要です。基本的な防災グッズ・備蓄品と合わせて手配をしてBCP対策を進めましょう。ここでは介護施設で準備した方が良い代表的な防災グッズ・備蓄品のリストを用意しました。
基本的な防災グッズ・備蓄品リスト
・水
・非常食
・衛生用品
・簡易トイレ
・毛布
・医薬品・救急用品
・非常用電源・電池
・懐中電灯
・携帯ラジオ
介護施設におすすめの防災グッズ・備蓄品リスト
・避難補助具(搬送用のベッドやマットレス、おんぶひもなど)
・経口補水液や特殊用途食品など
・簡易ベッド
・マスク・手袋
・ウェットティッシュ
高齢者1人あたり1日に必要な非常食・備蓄
介護施設では入所や利用をしている高齢者の最大数に合わせて非常食を備蓄することが大切です。必要な非常食の量は「食数×1人あたりの必要量×日数」で計算できます。
高齢者1人あたり1日に必要な非常食の量は1食あたり500~600kcalが目安なので、2食で1,000~1,200kcal、3食で1,500~1,800kcalです。災害時に状況が復旧するまでには3日かかることが多いため、介護施設では1人あたり3日分の非常食を用意しましょう。
ただし、介護施設での非常食の備蓄では入所されている高齢者だけでなく、職員や施設を訪問しているご家族も考慮して用意する必要があります。入所者数分の高齢者用の非常食に加えて、職員の最大勤務人数と外部者の最大人数も加味して非常食の総量を決めることが重要です。
高齢者向けの非常食を備蓄するポイント
介護施設で高齢者向けの非常食を備蓄するときには、災害時にトラブルなく高齢者に食べてもらえることが大切です。以下のポイントを押さえて非常食を選びましょう。
・主食・主菜・副菜を考えて非常食を組み合わせる
・咀嚼や嚥下の機能に対応している非常食を用意する
・カロリーや塩分に配慮した疾患への対応をしている非常食を用意する
・食味が良くて多くの人が食べられる非常食を選ぶ
・加熱調理の必要がない非常食を選ぶ
・常温で長期間保存できることを確認する
・種類を豊富にして少なくとも3日間は飽きさせない
介護施設では咀嚼や嚥下の機能が低下している方が入所している場合があります。とろみ剤、嚥下配慮食品、経管栄養剤、特別用途食品などにも対応することが大切です。
また、非常食の備蓄方法にも注意点があります。以下のポイントを念頭に置いて適切に備蓄しましょう。
・災害時でも取り出しやすい場所に保管する
・備蓄する場所を複数の場所に分散させる
・保管場所の温度や湿度に注意する
・ローリングストックの対策をする
ローリングストックは非常食の消費期限対策として欠かせません。消費期限切れで廃棄せずに済むように、介護施設の普段の食事に非常食を取り入れましょう。普段の食事として提供して利用者が食べられるか、好むかを確認できるメリットもある方法です。
介護施設で備蓄する高齢者にもおすすめの非常食
介護施設では高齢者に優しい非常食を備蓄しましょう。ここではおすすめの非常食を紹介します。
イシイで取り扱っている非常食は玄米を使用しています。白米と比べてビタミンB群などの栄養素が豊富に含まれています。ビタミンB群は新陳代謝や免疫機能に関わる必須栄養素です。高齢者になって食が細くなった際にもビタミンB群の補給をサポートできます。
玄米はよく噛まないと飲み込めないというイメージを持たれがちですが、イシイでは玄米をお粥にしています。玄米がゆなら飲み込みやすいので高齢者でも心配ありません。水分補給も兼ねられるため、非常食として適しています。
参照:ビタミンB6/B12の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット
非常食Aセット
非常食Aセットは玄米小豆がゆ、玄米がゆ+おかず(甘辛豚肉、キノコの佃煮)のセットです。おかゆには玄米が使用されているので腹持ちが良く、風味豊かな甘目の味付けのおかずとマッチします。
非常食Bセット
非常食Bセットは玄米梅がゆ、玄米がゆ+おかず四目野菜のネギ油ピリ辛煮、ごぼうと鶏肉のしょうが煮)のセットです。生姜や豆板醤などの香辛料を使用して食欲を促す工夫をしています。災害時の避難生活を乗り越えるための体力づくりには食事が重要なので、食欲増進を期待できる非常食はおすすめです。
非常食Cセット
非常食Cセットは玄米梅がゆ、玄米がゆ+おかず(鶏肉とごぼうの旨煮、大豆と野菜のひじき煮)のセットです。旨味がしっかりとしている玄米梅がゆとおかずの組み合わせで、避難生活中の食欲不振にも対策できます。
リゾット3種セット
リゾット3種セットは和風、洋風、イタリアンのリゾットセットです。アレルギー体質の方でも安心して食べられるアレルギーフリーにしています。高齢者の食事におすすめです。
potayu
potayuは高齢者から人気のある野菜のお粥です。野菜の本来の風味を生かしていておいしいと定評があります。3種それぞれに個性があるため、セットで用意しておくと毎食違う味わいを楽しめます。
まとめ
高齢者向けの介護施設では高齢者に対応できる防災対策が必要です。BCP対策では災害の発生を想定して職員の対応フローを策定し、災害時に必要な水や非常食、備品を揃えましょう。介護施設を利用している高齢者の中には特別食を必要とする人もいる場合があります。さまざまな高齢者に対応できるように非常食を備蓄して防災対策をすることが大切です。